外国語の発音を学ぶならブログ記事なんか読んでないで「音声学」を学ぼう
前回のエントリが少し評判が良かったので、補足の記事を書きます。
インターネット上でブログなどを検索すると、外国語 (特に英語) の発音を解説した記事を見つけることができます。日本人が苦手とする「L」と「R」、英語で「ア」で表わされる音の違い「hat」、「hut」、「hot」なんかは有名ですね。
ただし、インターネット上のブログ記事はどうしても断片的で非体系的なものになりがちなので、真剣に発音を学ぶつもりならば、1冊書籍を買って体系的に学んだほうが良いと考えています。外国語の発音に関しては、言語学の中の一分野である「音声学」で多くの研究が蓄積されていますので。
というわけで、私が読んで参考になった音声学の書籍を3冊紹介します。
脱・日本語なまり
脱・日本語なまり―英語(+α)実践音声学 (大阪大学新世紀レクチャー)
- 作者: 神山孝夫
- 出版社/メーカー: 大阪大学出版会
- 発売日: 2008/04/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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前回のエントリでもネタ元とした本です。この本の類書に無い優れた特徴は、外国語の発音を学ぶために、我々の母語である日本語の発音を基礎にして解説しているところです。文章が若干くだけた口語体で、しかも微妙にスベっている感はありますが、著者の日本語と外国語に対する知識は本物で、非常に有用な知識が記されています。ただし、英語に関して言えばプロソディー (いわゆるイントネーション) に関する記述がないため、他の本で補う必要があります。
音声データのCDは付属していませんが、著者がウェブサイトを公開して音声を掲載しています。
ファンダメンタル音声学
本書の著者は、イギリスで英語音声学を学び、ロンドン大学と国際音声学協会の実技試験で第一級を取得した方です。内容としてはイギリス発音がメインで一部アメリカ発音もあり、母音、子音の発音、強勢、音の変化、イントネーション、そして最後の章は会話やシェイクスピア、コクニーといった高度な内容まで含まれます。
本書の優れた特徴としては、強勢やプロソディにかなりの分量が割かれていることです。英語では、イントネーションの違いによって決定的な意味の違いが生じることがあり、その重要性を詳細に説明しています。
実践音声学入門
- 作者: ジョン・カニソンキャットフォード,John Cunnison Catford,竹林滋,内田洋子,設楽優子
- 出版社/メーカー: 大修館書店
- 発売日: 2006/07
- メディア: 単行本
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著者は、スコットランド出身で、アメリカのミシガン大学で教えた20世紀を代表する音声学者です。 上記の2冊よりもかなり詳細な音声学の知見が記載されています。ただし、英語話者向けに書かれた本であり英語の発音ができることを前提として、英語との比較で音声を解説している記述も多いため、他書で英語の発音を学んでから読むことをおすすめします。